法令違反を消費者目線でチェック(2)「ペットフード原料表示」「LEDクリップライト電池容量」(国民生活センター「消費者トラブルメール箱」2020年度報告書)

広告表示について、常に消費者目線を意識することが、表示違反のリスクマネジメントや顧客対応品質向上のためには極めて重要です。

国民生活センター「消費者トラブルメール箱」2020年度の報告書より、「追跡調査を実施した主な事案」を取り上げ、解説する3回シリーズの第2回目は、以下の2つのケースです。

《優良誤認の可能性のある表示》
(3)「マンダイ」を「たい」として販売するペットフードの通販会社
(4)販売サイトに表示されている電池容量の記載が事実と異なるLEDクリップライト

第1回目のケースについては、以下の記事をご覧ください。
・法令違反を消費者目線でチェック(1)「食品広告の原産国表示」「赤外線温度計測器」(国民生活センター「消費者トラブルメール箱」2020年度報告書)

(3)「マンダイ」を「たい」として販売するペットフードの通販会社< 2016年2月受信>
●寄せられた情報
「ペットフードを扱うネットショップで、『たい』のカテゴリー内にあった商品を購入しようとしたところ、『マンダイ』だった。サイトの1カ所、原材料欄にだけマンダイである旨が記載されていたが、ページを下にスクロールしないと確認することができない。全く別種の魚をたいと称して販売するのは問題ではないか。」

●調査結果
販売サイトを確認したところ、「たい」のカテゴリー内で「たいのフィーレ」という商品が売られており、商品販売ページ中部あたりの原材料欄にのみ「マンダイ」である旨が記載されていた。(「マンダイ」はアカマンボウ(アカマンボウ目アカマンボウ科の魚)の代表的な呼び名であり、たいとは全く異なる魚である)

当該サイトの表示は事実と異なり、「たいがこの価格で買えるなら安い」と消費者が誤解する可能性があり、特定商取引法上の誇大広告や景品表示法上の優良誤認に当たる可能性がある。

国センからの依頼:
事業者に対し、サイト内の表示は誤りであること、消費者が誤解する可能性があることを伝え、表示の改善を依頼したところ、後日、商品名とカテゴリーについて、「マンダイ」であることが分かる記載に変更されたことを確認。

●フィデスの視点
本ケースはペットフードですが、2013年のメニュー・料理等の食品表示について、いわゆる「食品偽装」や「食品表示等問題」等として社会問題化した際に策定された、「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」が参考となります。

「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方について」
(平成26年3月28日 消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/pdf/140328premiums_5.pdf

(4)販売サイトに表示されている電池容量の記載が事実と異なるLEDクリップライト
●寄せられた情報
「大手インターネットショッピングモールの販売サイトから充電式の LED クリップライトを購入した。サイトの画面表示には電池容量は 2000mAh とあったが、実際は 1200mAh であった。問題ではないか。」

●調査結果
販売サイト内の当該商品の表示を確認したところ、電池容量の表記として「2000mAh」との記載が複数箇所で見られた。他の販売サイトでも同型品と推測される商品が販売されており、そのサイトでは電池容量は「1200mAh」と表示あり。

もし、実際の電池容量が 2000mAh ではなく 1200mAh であった場合、特定商取引法上の誇大広告や景品表示法上の優良誤認の可能性がある。

事業者の説明:
電池容量 2000mAh という表記は誤りで、正しくは 1200mAh である。販売サイト内の表記は修正する。製品パッケージで 2000mAh と表記している部分についても記載を変更し対応する。

後日、事業者の販売サイトを確認したところ、電池容量の記載が 1200mAh に修正されていることを確認。

●フィデスの視点
仮に製品パッケージの表示が誤表示であり、それをそのまま販売事業者が販売サイトに転記したとしても、広告の表示責任者として景表法の規制対象となる可能性がありますので注意が必要です。

《参考情報》
・1社当たり商品数過過去最多 髙島屋オンラインストアの化粧品・雑貨147商品の原産国表示に景表法措置命令 (消費者庁 2019年6月13日)
・1社当たり商品数過去最多 ビックカメラECサイトの177商品の原産国表示に景表法措置命令(消費者庁 2021年9月3日)

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本ケースは国民生活センターが「追跡調査を実施した事案」ですので、明らかに広告関連法規に抵触する可能性のあるものとなっています。事業者としては問題ないつもりでも、思わぬ落とし穴があるものです。

自社においても、お客様からの問い合わせやクレーム情報を収集、分析することで問題を早期発見し、大きなトラル予防、コンプライアンスリスク低減につなげていきましょう。

次回は、以下のケースを取り上げます。

《有利誤認の可能性のある表示》
(5)返金保証を受ける条件が分かりにくい広告サイト

《利用ルール・退会手続きがわかりにくい表示》
(6)会員退会手続き方法が分かりづらい携帯電話用壁紙サイト
(7)受取期間を過ぎた商品を廃棄処分する食材配送サービス業者

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消費者トラブルメール箱
http://www.kokusen.go.jp/t_box/t_box.html

「消費者トラブルメール箱」2020年度のまとめ(2021年10月21日 独立行政法人国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20211021_1.html
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≪関連記事≫
・消費者目線と事業者目線の違い。「消費者トラブルメール箱」2015年度の報告書より

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。