沖縄特産販売、珪素の健康食品の効果表示に景表法措置命令。業界団体の会員社へのチェック機能働かず (消費者庁 2022年6月1日)

6月1日、消費者庁は、沖縄県の健康食品の製造販売業等を営む沖縄特産販売(株)に対し、「養力珪素」と称する健康食品の身体機能改善効果に関する表示について、景品表示法違反(優良誤認)の措置命令を行いました。

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沖縄特産販売株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について
 (消費者庁 2022年6月1日)
https://www.caa.go.jp/notice/entry/028836/
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優良誤認は不実証広告規制(※)を用いた処分で、沖縄特産販売から表示の裏付けとなる「合理的な根拠」資料は提出されませんでした。
処分の対象となった表示は、ダイレクトメールと商品の同梱チラシです。
なお、同社は処分を前に、2022年5月23日に不当表示を認める謝罪広告を日刊新聞紙2紙に掲載したことから、措置命令において消費者に対する誤認排除措置は免じられています。
処分の内容を確認します。

(※)
不実証広告規制(7条2項)
消費者庁長官は、商品・サービスの内容(効果、性能)に関する表示についての優良誤認表示に該当するか否かを判断する必要がある場合に、期間を定めて、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。

⇒ 事業者が資料を提出しない場合又は提出された資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、当該表示は不当表示とみなされる。


違反概要

【対象商品】
「養力珪素」と称する食品

【表示媒体・表示期間】
ダイレクトメール:
2019年5月7日、同年6月4日、同月7日、同年7月29日、同年8月5日、同年10月28日、2020年2月14日、同年5月18日、同年6月24日及び同年11月9日

自社商品同梱チラシ:
2020年4月5日から2021年4月4日までの間

【違反内容】
表示内容:
あたかも、商品を摂取又は噴霧すれば、商品に含まれる珪素の作用により、

・血液をサラサラにする効果
・血管を強くし、高血圧、高血糖及び糖尿病を改善する効果
・シミ、シワ及びイボを解消する効果
・二日酔いすることなく目覚めを良くする効果
・アトピー性皮膚炎を解消する効果
・化粧品の浸透性を高める効果
・体内脂肪を浄化排出する効果
・花粉症及び鼻炎を解消する効果
・陰茎に血液を多く流入させる効果
・養毛剤の浸透性を高める効果
・生鮮食品の鮮度を長持ちさせる効果
・偏頭痛、肩凝り及び腰痛の症状を和らげる効果
・髪の量を増やし、肌に張りを出す効果
・知覚過敏を完治し、歯周病を改善する効果
・老化を防ぐ効果並びに動脈硬化症を予防する効果

が得られるかのように示す表示をしていた。

表示例:ダイレクトメール

(消費者庁発表資料より抜粋)
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220601_02.pdf

表示例:自社商品同梱チラシ

(消費者庁発表資料より抜粋)https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_220601_03.pdf

実際:
当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社は資料を提出しなかった。

働かなかった業界団体としてのコンプライアンスチェック機能

今回の措置命令は消費者庁及び内閣府沖縄総合事務局の調査による事案です。
内閣府沖縄総合事務局とは、沖縄における公正取引委員会の地方事務所の役割を担っており、消費者庁から委任され景表法の調査を行っています。

本事案の記者会見によると、「珪素」に関する食品での措置命令は今回が初の事案であり、また、沖縄県内では、健康食品に対する不実証広告規制による措置命令は初めてとなっています。
不当表示について、同社は、原料を仕入れている取引先から入手した、珪素に関する効果の資料を基に商品の表示をしていましたが、商品そのものにその効果があるかについての根拠は確認していなかったということです。

原料の効果について科学的根拠が認められたものであったとしても、商品としての効果の広告表現には、その裏付けとなる合理的根拠が求められます。
過去に、「葛の花由来イソフラボン」を機能性関与成分として、痩身効果を標ぼうする機能性表示食品の販売事業者16社に対する一斉処分がありました。この事案においても、成分である「葛の花由来イソフラボン」の機能性の科学的根拠については認められていましたが、商品の痩身効果について各社の広告表現の裏付けとなる合理的な根拠が認められず、不実証広告規制による措置命令となりました。

・「葛の花」16社に、機能性表示食品で初の景表法措置命令。届出内容と表示の整合性
(消費者庁:平成29年11月7日)

また、仮に、珪素に関する効果だけでなく、商品としての効果の根拠を確認していたとしても、本事案の表示内容は医薬品的な効能効果を標榜していることから、薬機法上、食品に対して表示することは認められません。
同社は、(公社)日本通信販売協会および、(一社)沖縄県健康産業協議会の会員企業ですが、業界団体として会員社へのチェック機能が働いていなかったと言わざるを得ません。

商品の効能効果を謳う表示については、しっかりと合理的根拠の考え方について理解し準備が求められます。
フィデスがサポートいたします。

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《参考記事》
・PS配合糖鎖サプリの認知症予防効果。シーズコーポレーションに景表法措置命令。同梱冊子・チラシも注意(消費者庁:2021年5月14日)

・石垣島の農組に景表法措置命令。スパイスの原料産地表示に優良誤認
 (平成30年5月15日 消費者庁)

・ロイヤルダイニングの牛肉料理メニューに景表法措置命令。黒毛和牛表示、実際は外国産牛
(消費者庁:平成31年4月26日)

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久保京子

このサイトを運営する(株)フィデスの代表取締役社長。メーカーにてマーケティング業務に従事した後、消費者と事業者のコミュニケーションの架け橋を目指し、99年に消費生活アドバイザー資格を取得する。
(財)日本産業協会にて、経済産業省委託事業「電子商取引モニタリング調査」に携わったことを契機に、ネットショップのコンプライアンス及びCS向上をサポートする(株)フィデス設立。